中小企業診断士の二次試験の概要は?
大きく分けて、「筆記式」と「口述式」の試験がある!
中小企業診断士の資格試験において、二次試験は一次試験7科目すべてを合格した方のみが挑戦することになります。
この二次試験にも、「筆記試験」と「口述試験」があり、まず筆記試験を受験し、合格した方が口述試験を受けることができます。
まずは、試験概要を見ていきましょう。
<筆記試験>
A:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例I / 配点:100点 / 試験時間:09:40~11:00
(80分)
B:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例II / 配点:100点 / 試験時間:11:40~13:00
(80分)
C:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例III / 配点:100点 / 試験時間:14:00~15:20
(80分)
D:中小企業の診断及び助言に関する実務の事例IV / 配点:100点 / 試験時間16:00~17:20
(80分)
<口述試験>
筆記試験科目問題から、ランダムで出題 / 配点:非公開 / 試験時間:受験者ごとに個別指定(約10分)
筆記試験は各設問に15文字から200文字程度で記述する方式で、口述試験では約10分間の面接が行われます。
筆記試験で問われる科目は以下の通りです。
内容自体は一次試験で問われる分野と共通しています。
・A(事例Ⅰ):組織、人事
・B(事例Ⅱ):マーケティング、流通
・C(事例Ⅲ):生産、技術
・D(事例Ⅳ):財務、会計
口述試験においても、問われるのは筆記試験の事例が中心です。
3名の面接官からランダムな質問がなされ、4題回答します。
試験官と直接やり取りをする形式となり、テキストや資料等を見ずに口頭で回答する必要があります。
中小企業の経営陣に対し、的確なプレゼンテーションができる実力を持っていることを証明するための試験です。
中小企業診断士の二次試験(筆記試験・口述試験)の内容と対策
二次試験[筆記試験]:「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例I(組織・人事)」の内容・対策
それでは、二次試験に合格するための対策はどうすればいいのでしょうか。
まず、筆記試験の対策からお話しします。
筆記試験は、一次試験と異なり、知識の蓄積ではなく「生産性の高い回答作成の手順」と「試験時間の効率的な使い方」が課題になります。
事例ごとに詳しく見ていきましょう。
事例Iでは、経営戦略、組織管理、組織改革、人材育成など組織・人事を中心とした問題が出題されます。組織再編や組織改革による組織力の強化といった問題が出てますので、企業経営理論と関りが深い分野です。
また、会社内部の人材や運営だけに留まらず、ビジネスモデルや事業戦略方面の問題も出題されることから、設問の解釈に戸惑う受験生が例年多いようです。
内部だけでなく、外部環境にも目を向けて具体的な改善策を考える必要があります。
2017年の試験では「成長要因、組織構造、組織管理、戦略、経営資源、人材の採用・育成」といったオーソドックスなテーマが出題されましたが、年度によっては更に広いテーマが出題されることもあります。
2018年の試験では、エレクトロニクス・メーカー業界を例として「競争戦略、強みを強化する事業展開、組織改編、チャレンジ精神や独創性を維持するための取り組み」が出題されました。
他にも「新しい分野の事業を社内で実施していたが、後に関連会社を設立し移管した理由を答えよ」「成果主義に基づく賃金制度を導入していない理由として、どのようなことが考えられるか」といった設問が見られます。
対策としては、一次試験科目である「企業経営理論」の論点を整理して頭に叩き込むことが大事です。
設問をそのまま捉えてしまい、意図を理解しないまま回答すると得点になりません。
例としては、「人気のA商品が近年売り上げを落としている。考えられる原因を答えよ」という出題に対し、人事・組織を度外視してマーケティングの観点から回答してしまうケースです。
あくまで事例Ⅰで求められているのは「経営戦略の策定、適切な企業経営を目標に、組織や人事の改変を施策として導入すること」です。
効果が期待できる回答ではなく、出題者の意図に沿った提案が出来れば高得点が狙えるでしょう。
もう一つ、事例Ⅰの対策として組織・人事を構造的に把握するというものがあります。
人事・組織で行える施策バリエーションはある程度決まっており、ハード面とソフト面に分けると理解しやすいかもしれません。
<ハード面>
・組織構造:機能別組織、事業部制など適切な形態へ変更、プロジェクト組織といった時限的組織の活用
・人事制度:目標管理制度や成果主義の導入、教育制度(OJT、eラーニング)の導入、表彰制度の導入
<ソフト面>
・組織文化:マニュアル化の推進
・能力向上:職務の拡大
・モチベーション向上:自己啓発活動の補助、娯楽活動の導入
ただ、一概に取っつきにくい科目というわけではありません。
二次試験の事例Ⅰから事例Ⅳまでの中で、最も身近な科目ともいえます。
受験生のほとんどが会社や学校、民間団体のいずれかに在籍した経験があり、組織や人事に対する具体的なイメージを持っているからです。
二次試験[筆記試験]:「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例II(マーケティング・流通)」の内容・対策
マーケティング・流通を中心とした経営の戦略及び管理に関する事例がテーマです。
小売業やサービス業など身近な店舗を中心に出題される傾向があり、一次試験科目でいえば「運営管理」、「企業経営理論」科目と内容が共通しています。
旅館やスーパーといった業種がテーマになるためイメージがしやすいのが特徴。
また、他の事例に比べて設問で与えられる情報量が非常に多く、いかに素早く読み取るか、情報の集約力や把握力が重要になるでしょう。
2018年度の出題内容は、旅館を例として「3C分析、ホームページの活用方法、ダーゲット顧客の選定、クチコミ誘発に有効な顧客との交流内容、新たな需要を取り込むための施策」が出題されました。
2017年度は寝具小売業がテーマで、「競合の状況、購買履歴を活用した販売拡大策、顧客生涯価値向上の施策、新規顧客層獲得策」が出題されました。
対策としては、事業規模に見合った施策を第一に考えることです。
集客、売上向上、差別化といったテーマは専門知識がなくともアイディアが想像しやすい特徴がありますが、つい与件内容に見合わない施策を提案してしまいがちです。
設問から得られる情報を頭に入れて、「施策の根拠」「施策を実施すべき理由」を答えられるようにしておきましょう。
その際、設問で見るべきポイントは求められる回答のジャンルです。
「成長戦略(=企業全体の方向性)」「事業戦略(=事業単位の方向性)」「機能戦略(=実施する具体的な施策)」など、回答の方向性を理解する必要があります。
与件分は時系列的な構成になっているため、まずは素直に読み解くことから始め、一次試験の知識をもとに回答すると良いでしょう。
事例Ⅱでは4問程度の設問が出題されますが、各問に正しく回答しているだけでなく、整合性も重要です。
中小企業診断士二次試験は、試験の解答が事例企業への診断助言という位置づけになっています。
一つ一つのアドバイスが正確でも、全体の整合性が取れていなければ助言として適切ではありません。
二次試験[筆記試験]:「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例III(生産・技術)」の内容・対策
生産や技術をテーマに、経営の戦略および管理に関する事例が出題されます。
具体的には、生産性や技術の向上、技術の活用等を図る戦略のことを指し、一次試験科目の「運営管理」の内容が中心です。
事例企業としては製造業が中心になるため、生産現場になじみの薄い人にとっては難しい科目になるでしょう。
生産計画の見直し、OEM製品との兼ね合い、生産拠点の策定など、製造業ならではの与件が並びますので、生産現場をイメージしながら回答する事が求められます。
現状の問題点を指摘して改善案を提出する問題が頻出しているので、設問全体の理解が重要です。
2018年度試験ではプラスチック射出成型加工業を例に、「業績を維持してきた理由、作業方法や生産計画上の問題点・改善策、生産管理のコンピュータ化、付加価値向上につながる新たな戦略」が出題されました。
対策としては、一次試験科目の「運営管理」、「企業経営理論」、「経営情報システム」の復習です。情報量が非常に多い科目ですので、いかに早く読み取り、整理することができるかがポイント。企業の強み、弱み、機会、脅威といったSWOTを表す箇所には下線を付けるなどしてメモしておくと良いかもしれません。
企業の強みに関しては高確率で問われますので、最初に設問を読む際の集中力が得点を左右します。
基本的に知識、キーワードの把握がカギとなる科目ではあるものの、経営戦略のポイントを踏まえた解答が求められます。
「CAD/CAMの導入メリット」という設問では、単純にCADやCAMのメリットを書くのではなく、事例企業の課題や弱みにどう影響を与えるのかを記載しなければいけません。
単純に知識を羅列するような解答にならないように気を付けましょう。
二次試験[筆記試験]:「中小企業の診断及び助言に関する実務の事例IV(財務・会計)」の内容・対策
経営分析、企業価値、設備投資の経済性計算が出題されます。
例年、財務諸表を元にして経営分析を行う問題が出題されますので、一次試験科目の「財務・会計」は押さえておきましょう。
適切な資本調達と運用を図る戦略や、アカウンティング(会計)・ファイナンス(財務)の両面での応用力が問われる傾向があります。
また他の三科目と大きく異なるのは、文章記述だけでなく計算問題が出題される点です。
「設備投資の経済性計算」「CVP分析」「キャッシュフロー計算書作成」といった計算問題をいかに素早く正確に得点できるかがカギになるでしょう。
対策としては、解答出来そうな設問を見極めることです。
全ての問題を解こうとすると時間が足りなく恐れがあるため、自身が得意とする問題から先に解いていくことをおすすめします。
基本的には経営分析、企業価値、設備投資の経済性計算なので、一次試験科目の「財務・会計」の該当箇所を見直しておくことが大事です。
与件文章自体は短いものの、数値から企業の状態を判断しなければいけないため、財務会計の過去問や計算問題を繰り返し解いて慣れておくと良いでしょう。
二次試験:「口述試験」の内容・対策
二次試験の筆記試験に合格すると、最後に受験することになるのが「口述試験」です。
3名程度の試験官を前にして、個別に1人当たり約10分で行われます。
質問されるのは筆記試験の事例をもとにした内容です。
筆記試験とは異なる視点からの質問になりますが、そこまで難易度は高くないので安心してください。
99%が合格していることからも分かるように、選抜するという意味合いよりは最終確認と捉えても良いでしょう。
対策としては、筆記試験で出題された事例の状況を把握しておくことです。
想定される質問に対してあらかじめ回答を用意しておけばスムーズにコミュニケーションを取れます。
想定外の質問にも答えられるように、丸暗記などは避けて、各科目の理解を深めるのがおすすめです。
また、緊張のあまり何も話せなくなってしまわないよう、事前に模擬面接を行って雰囲気に慣れておきましょう。
まとめ
当ページでは、二次試験には筆記試験、口述試験の2つがあることや、各科目の内容と試験対策についてご紹介をしてきました。
二次試験はこれまで学習してきたことの知識とその応用力や読解力が問われるため、しっかりとした対策が必要になります。
口述試験では丸暗記で臨むことはせず、しっかりと知識を理解した上で、模擬面接で対策をするなどをしておくと、スムーズに対応することができるでしょう。